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緊急時の対応及び危険防止に関する講義 テキスト

緊急時の対応及び危険防止に関する講義

◆緊急時の対応方法

遭遇したくないことだが、訪問先で利用者の状態が急変することもある。そのような時には、冷静に行動することがなによりも重要となる。あらかじめどのように行動するかを想定しておき、いざその時に冷静に行動できるようにする。また、利用者のかかりつけ医の連絡先、利用者の既往歴などの情報、本人が延命を望んでいるのかそうでないのかといったことも日頃から確認しておく必要がある。

・救急車を呼ぶべき症状

【頭】突然の激しい頭痛/突然の高熱/支えなしで立てないぐらい急にふらつく

【顔】顔半分が動きにくい、あるいはしびれる/ニッコリ笑うと口や顔の片方が歪む/ろれつがまわりにくい、うまく話せない/視野がかける/ものが突然二重に見える/顔色が明らかに悪い

【胸や背中】突然の激痛/急な息切れ、呼吸困難/胸の中央が締め付けられるような、または圧迫されるような痛みが23分続く/痛む場所が移動する

【腹】突然の激しい腹痛/持続する激しい腹痛/吐血や下血がある

【手足】突然のしびれ/突然、片方の腕や足に力が入らなくなる

この他、意識の障害、けいれん、大量出血のある外傷、広範囲のやけど、冷や汗を伴うような強い吐き気、異物の飲み込み、事故などの場合もすぐに救急車を呼ぶ必要があるとされている。

・救急車を呼ぶべきか迷った場合(東京都内の場合)

東京消防庁救急相談センター(24時間対応・年中無休)
救急車を呼んだ方が良いのかといった受診に関するアドバイス、応急手当に関するアドバイスなどを案内してくれる。

携帯電話、PHS、プッシュ回線からは
短縮番号 #7119
ダイヤル回線からは
23区:03-3212-2323
多摩地区:042-521-2323

119番通報マニュアル

下の内容を落ち着いて伝えましょう。

救急:「消防です。火事ですか?救急ですか?」
ヘルパー:「救急です」
救急:「どうされましたか?」
ヘルパー:誰が、いつから、どのようなことがあって、現在どういう状態なのかなど、状況を具体的に説明する。
救急:「今どこですか?」
ヘルパー:住所は番地や部屋番号まで詳しく、目印となる建物や公園、交差点名などを伝える。
救急:「あなたの名前と電話番号を教えてください」
ヘルパー:通報した人間の氏名、連絡可能な電話番号を伝える。

まずは「119」番へ電話をかける。この時、緊急事態なのでに焦ってしまい、間違えて「110」番に電話をしてしまったという話もよくある。とにかく冷静になることが重要。また、携帯電話から電話をかけると住所の特定が遅れてしまうので、固定電話からかけるほうが望ましい。
119」に電話をかけると、近所の消防署ではなくその地区の災害救急センターにつながる。そのことを念頭に置いておくと、電話のやり取りがスムーズにいく。まずは「火事ですか?救急ですか?」と聞かれるので、冷静に「救急です」と答える。
続いて聞かれることは、「何があったか」を聞かれる場合と、「今どこにいるのか」を聞かれる場合がある。この順番は前後するだけなので、どちらの質問が来ても素早く答えられるようにしておく。「どうされましたか?」と聞かれた場合、誰が、いつから、どのようなことがあって、現在どういう状態なのかなど、状況を具体的に説明する必要がある。例を挙げると、「80歳のおばあちゃんが、10分くらい前から胸が痛いと苦しがっています」、「お年寄りの男性が倒れていて息をしていません」など。その方の年齢や性別などを伝え、分かる場合は何分前からどんなことがあったのか、その方の意識・脈・呼吸・皮膚や唇の色など、分かる範囲で伝える。簡潔に、しかし詳細に伝えることが必要。
「今どこですか?」と聞かれた場合、正確に住所を伝える。携帯電話で通報する時は、通報場所の住所を近くの人に聞くか、道路の看板や、電信柱の表示などで確認する。番地や部屋番号まで詳しく伝え、可能であれば目印となる建物や公園、交差点名などまで伝える。
続いて「あなたの名前と電話番号を教えてください」と言われるので、自分の名前と連絡可能な電話番号を伝える。また、確認のため消防本部から折り返し電話をかけることがあるので、携帯電話やPHSの電源は入れたままにしておく。
その後、救急車が来るまでに応急手当や負傷者の安全確保などを依頼される場合もあるので指示に従う。

また、救急車が来るまでに準備出来そうであれば、保険証・診察券・お金・薬と薬剤情報提供書、またはお薬手帳、靴などの用意をする。救急車が来たら、事故や具合が悪くなった状況とその後の変化、行った応急手当、持病や服用している薬、かかりつけ医などを伝えることが必要となる。日頃からこれらを救急医療情報キットとして、保険証などはコピーして用意しておくと便利である。他にも、ワーカーさんやケアマネさんといった連絡するべき相手と電話番号を予め調べておき、メモしておいたり携帯電話に登録しておいたりすると良い。

・救急蘇生法

心停止に対する心肺蘇生とAED、気道異物による窒息に対する気道異物除去を一次救命処置と呼ぶ。そして、出血に対する圧迫止血や、意識がない場合にとる回復体位などを応急手当と呼ぶ。 これらの一次救命処置と応急手当を総称するものが、救急蘇生法。

・救急蘇生法の簡易まとめ

「異状に気が付いた!」
呼びかけを行う
周囲の応援を呼ぶ(状況次第)119番通報。
呼吸の確認
普段通りの呼吸がある場合→「気道確保」
普段通りの呼吸がない場合→「心肺蘇生」+(近くにあれば)AEDを使用

・呼びかけ~119

*事故などのときは二次災害を防ぐために周囲の安全を確認
交通事故やガスの事故などの場合には、呼びかけを行う前に、二次災害を防ぐために周囲の安全を確認する。病気などが原因で異変が起きていることも多いが、まずは周囲を見渡し、巻き込まれないために安全かどうかを確認する。

*肩を叩きながら相手の耳元で「大丈夫ですか?」
周囲の安全を確認後、呼びかけを行う。肩を叩きながら、相手の耳元で「大丈夫ですか?」と呼びかける。深く寝ているだけだった場合はびっくりさせてしまうため、必要以上に大声を出す必要はない。また、意識を確かめるつもりで身体を揺すりたくなるが、身体を動かすと状態を悪化させることが多い。その場で、安静に、が原則となる。軽く肩を叩きながら耳元に声をかけることで、意識の有無を確かめることができる。

*「目的をもった仕草」がある場合→意識がある→かかりつけ医に連絡する
呼びかけに対して反応があれば「意識はある」と判断し、深く寝ていただけなどの場合を除いてかかりつけ医に連絡する。「目的をもった仕草」とは、目を開ける、何らかの応答があるといった反応のことを指す。

*「目的をもった仕草」がない場合→意識がない→119番に電話
前述した「目的をもった仕草」がない場合、「意識がない」と判断する。「反応」と「目的をもった仕草」を意識するのには理由があり、突然の心停止直後にはけいれんが起こることがあるため。そのようなけいれんも「反応」だが、「目的をもった仕草」ではないので反応なしと判断する。

119番に電話をする時には、傷病者と二人きりであれば自分で119番に通報するしかないが、もし近くに人がいれば、できるだけ周囲の者を巻き込み複数で役割分担して対処する。「だれか、救急車を呼んでください!」といった不特定多数に向けられた言葉の場合、人間は他人任せとなり行動しないため、「そこのあなた、救急車を呼んでください!」と指を指して個人に対して言葉をかけるようにする。

・呼吸の確認

10秒以内に、呼吸により胸と腹が上がったり下がったりするかを観察
まず、傷病者の胸部と腹部の動きを観察する。人は呼吸をすると、その部分が上がったり下がったりするので、その確認を10秒以内で行う。10秒という時間は、それ以上かけてはいけないという上限なので、もっと早く見切っても構わない。

*普段通りの呼吸がある場合→気道確保、回復体位で救急車を待つ
「普段通りの呼吸」があれば、回復体位という横向きの体勢にして救急車を待つ。

*普段通りの呼吸がない場合→心肺蘇生をして救急車を待つ
「普段通りの呼吸」が確認できないときは「呼吸なし」と判断する。同じ「呼吸」でも、「普段通りの呼吸」と異常な呼吸が存在する。後述する異常な呼吸が確認される場合も「呼吸なし」と同じ扱いにする。

*死戦気呼吸
死戦期呼吸とは、心原性の心停止後によくみられる、しゃくりあげるような途切れ途切れに起こる低酸素時の呼吸のことで、別名をあえぎ呼吸と言う。人の誕生の時と臨終の時にみられ、この呼吸を「呼吸している」と誤認し、心停止を見逃すことも多い。この呼吸があるうちに心肺蘇生を開始すれば救命率が高い。死戦期呼吸を初めて見た人は「かろうじて呼吸をしている」「つらそうで努力した呼吸をしている」「大きな音を立ててあえぐ呼吸をしている」といった印象を受けることが多い。

*普段通りの呼吸と死戦期呼吸を見極めるポイント
「胸部と腹部の上下運動の有無」
死戦期呼吸の場合、胸部と腹部の上下運動がない。
「顔色」
死戦期呼吸の場合、顔が蒼白、もしくはどす黒くなっている。
「呼吸音」
死戦期呼吸は子供が激しく泣いたあとにみられるような、しゃくりあげるような不規則な音
「呼吸周期」
成人の場合、正常な呼吸は3秒~5秒に1回だが、死戦期呼吸の場合は1分間に数回程度。
「吸気と呼気のバランスの違い」
正常な呼吸は空気を吸う時間と吐く時間の比率は12だが、死戦期呼吸では空気を吐く時間の比率が高まる。

・気道確保の手順

気道確保は、呼びかけを行った結果意識がないと判断し、呼吸の確認を行った結果普段通りの呼吸があると判断した場合に行う。

*傷病者を仰向けに寝かせ、顔を横から見る位置にひざまずく。
*向かって頭側の手で傷病者の額を押さえながら、もう一方の手の指先をあごの先端の骨のある硬い部分にあてる。
*あごの下の軟らかい部分を指で圧迫しないよう注意しながら、あご先を持ち上げ、顔がのけぞるような姿勢にする。(折り曲げたタオルを肩の下にしくと効果的だが、首の下だと逆効果となるため避ける)
*口の中に異物がある場合は出来る範囲で除去する。
*呼吸状態を継続観察する。(呼吸が認められなくなったら心肺蘇生を開始する)

・回復体位

周囲の人間に応援を求めるためや、AEDを持ってくるためなどで傷病者のもとを離れる時、気道確保後の救急車を待っているときには回復体位にする。回復体位にすることで、急な様態の変化などが起こっても悪化を防ぐことができ、呼吸も負担が少なく、嘔吐による窒息を予防することができる。
*傷病者を横向きに寝かせ、下側の腕を前に伸ばし、上側の腕を曲げて、その手の甲に顔を乗せる。
*姿勢を安定させるため、上側のひざを約90度曲げる。

回復体位は、まれに下側の腕に荷重がかかり血管や神経が圧迫・損傷することもあるので、長時間の同じ姿勢は注意が必要。傷病者の呼吸状態を継続観察し、呼吸が認められなくなった場合、ただちに心肺蘇生を開始する。

・心肺蘇生

心肺蘇生とは、胸骨圧迫と人工呼吸を行う一連の流れを指す。胸骨圧迫とはいわゆる心臓マッサージのことで、強く、速く、絶え間ない胸骨圧迫によって、救命率は大幅に向上する。人工呼吸を心情的にやりたくない場合でも、胸骨圧迫だけはできるだけ行う。
また、胸骨の骨折よりも蘇生が優先されるため、傷病者の肋骨が折れても構わない。調査によれば、肋骨が折れることは意外に少なく2%程度であり、調査の範囲ではそれによる内臓の損傷はない。1分当たり80回の速さ、胸骨圧迫による胸部の沈み4cmをそれぞれ下回ると除細動成功率が低くなるが、やらないよりはやったほうが延命率は高い。
また、救助者に期待されているのは救急車が到着するまでの約10分間。しかし、1人で心肺蘇生を行わざるを得ない場合、10分以内に体力的限界を迎えることもあるが、そのような体力的限界となった場合の中止・中断は許容されている。

・胸骨圧迫の手順

*仰向けに寝かせ、傷病者の胸の横に座る
圧迫は衣服の上からでもよい。また、できるだけ硬いものの上で行う。(エアーマットレスの場合は空気を抜く、布団の場合は下に板を敷きこむといった対応)

*胸骨の下半分(目安:胸の真ん中)に、片方の手のひら基部(手首に近い部分)をあて、もう片方の指で下側の指を持ち上げるように重ねて組む
手のひら全体での圧迫や指先を曲げた状態での圧迫は、肋骨損傷などの原因にもなってしまう。組んだ上側の指で下側の指を持ち上げるようにすると、手のひらの手首に近い部分に力を集中できる。

*腕を真っすぐ伸ばし、組んだ手の真上に肩がくるようにする

1分間当たり少なくとも100回の速度で、傷病者の胸が少なくとも5cm沈み込む強さで、胸が元の高さに完全に戻ってから次の圧迫をするように注意しながら胸骨圧迫を行う

圧迫の度合いは傷病者の年齢によって異なり、8歳以上の場合は手のひら基部だけに力が加わるよう意識しながら、傷病者の胸が少なくとも5cm沈み込む程度に圧迫する。18歳未満の小児の場合は同様の方法で、胸の厚さの約1/3の深さを目安に圧迫する。1歳未満の乳児の場合、胸の真ん中に指を2本当て、胸の厚さの約1/3の深さを目安に圧迫する。
圧迫の速さについては、1分間当たり少なくとも100回のテンポで胸骨圧迫を行う。毎回の圧迫の後で、胸が元の高さに完全に戻るように十分に圧迫を解除することを忘れてはならない。そのうえで、胸骨圧迫が浅くならないように注意が必要。
また、救助者が疲労して、圧迫の強さ、速さ、圧迫解除などが不十分になるのを防ぐため、周りに協力してくれる人がいる時には、12分ごとを目安に胸骨圧迫の役割を交代する。交代による胸骨圧迫の中断は最小限にとどめ、休んでいる救助者は、胸骨圧迫の位置、テンポ、深さが適切に維持されているかをチェックする。例えば時計を見ながら秒単位で「12345、・・・」と数える。5秒で8回以上圧迫が出来ていれば毎分約100回以上、1秒単位に2回であれば毎分120回。

・人工呼吸の手順

心肺蘇生の訓練経験がない場合、人工呼吸は行わず、胸骨圧迫のみを実施する。訓練を受けた人であっても、人工呼吸を行うのがためらわれる場合は、同様に胸骨圧迫のみで構わない。ただ、小児の心停止、窒息、溺水、気道閉塞、目撃がない心停止などの場合は、人工呼吸を組み合わせた心肺蘇生を実施することが望ましいとされている。十分な訓練をうけている救助者は、胸骨圧迫30回のあと人工呼吸2回という組み合わせを絶え間なく続ける。小児・乳児も同じ方法で構わないが、2人以上の救助者が交代で小児・乳児に対し心肺蘇生を行う場合は、胸骨圧迫と人工呼吸の比を15:2にする。

*気道確保の体勢から、額側の手の親指と人差し指で鼻をつまむ(吹き込む息が鼻から漏れ出さないため)
*口を大きく開き、傷病者の口をおおうように密着させる(1歳未満の乳児の場合は、口と鼻を同時に口に含む)
*約1秒かけて、傷病者の「胸が上がることが確認できる程度」の息を吹き込む
*口を離して息が自然に吐き出されるのを待ってから、2回目の吹き込みを行う。(1回目で胸が上がらなかった場合は、気道確保をやり直してから2回目を吹き込む)

胸骨圧迫から人工呼吸という心肺蘇生を行った後、心拍再開を示す明らかな反応が認められた場合、心肺蘇生を中止する。この時の反応というのは正常な呼吸や目的のある仕草などのこと。心肺蘇生中止後は、呼吸が妨げられないように必要なら回復体位にし、慎重に様子を見守りながら救急隊の到着を待つ。

AEDの使用方法

AEDが到着した場合はただちに使用を開始し、その後はAEDの音声やランプの指示に従って胸骨圧迫から心肺蘇生を再開する。救助者が2人以上いる場合は、1人がAEDの準備をしている間ももう1人が心肺蘇生を続行する。

*傷病者の頭の近くに置いて電源を入れる
機種によって、ふたを開けると電源が入るタイプと、電源ボタンを押す必要のあるタイプがある。

*衣服を開き、電極パッドを袋から取り出し、パッドに描かれた絵の位置を参考にして、1枚を前胸部、もう1枚を側胸部の肌に直接密着するように貼り付ける
機種によっては、電極パッドのケーブルをAED本体に差し込むことが必要となる。電極パッドと肌の間に空気が入っていると電気ショックがうまく伝わらないため、電極パッドは肌にしっかり密着させる。衣類を脱がしにくければAED装置に入っているハサミで切る。地面が濡れていても問題ないが、胸が濡れていたらAEDの効果が不十分になるため、AED装置に入っているタオルで拭き取る。女性の傷病者に対しては、向かって左用のパッドを側胸部か、左乳房の下に装着する。また、心臓ペースメーカーや植え込み型除細動器を使用している傷病者の場合、本体の膨らみ部分をそこから8cm以上離して装着する必要があり、電極パッドを胸壁の前面と、背面または側面に装着してもよい。

*自動的に心電図解析が始まるので、傷病者に触れないこと
電極パッドが正しく貼られると、「傷病者から離れてください」などの音声ガイドが流れ、自動的に心電図解析が始まる。この時に解析ボタンを押す必要のある機種もある。

*充電が始まり、完了後にAEDの指示に従って「ショックボタン」を押す
誰も傷病者に触れていないことを確認する。「ショックボタン」を押した瞬間に、強い電気が流れ、傷病者の体がビクッと突っ張る。

*電気ショック後、または心電図解析で「ショック不要」の指示が出た際は胸骨圧迫を再開する
2分後にAEDが再び自動的に心電図解析を始めるので、心肺蘇生と電気ショックの手順を繰り返す。この時にほとんどの製品で毎分100回のリズム音が流れるので、それに合わせて圧迫を行う。

*傷病者が(嫌がって)動き出すか、救急隊などに引き継ぐまで続行する
傷病者が動き出して心肺蘇生とAEDを中止しても、電極パッドははがさずに電源も入れたままにしておく。

2010年以前に製造されたAEDの音声ガイダンスは旧ガイドラインに沿っているため、心肺蘇生手順が今の説明とは異なっていて、胸骨圧迫30回毎に人工呼吸を2回としてガイダンスされる。しかし、現在のガイドラインでは人工呼吸は必ずしも選択しなくてよいとなっているので、胸骨圧迫のみを選択したのであれば人工呼吸ガイダンスを無視して胸骨圧迫のみを行う。

AEDの設置場所

日本救急医療財団が公開している全国AEDマップ(下記URL)などを参照し、利用者宅周辺や自宅周辺、日頃から利用する機会の多い場所などのAEDの設置場所を把握しておくと良い。


◆応急手当~けいれん~

けいれんとは、筋肉が突然、発作的に収縮すること。身体の一部に起こるけいれんと、一時的に呼吸が止まったり意識がなくなったり、時には白目をむいて口から泡をふいて便や尿を漏らしてしまうような全身のけいれんとがある。

・原因

高熱を出した時に起こる熱性けいれんが多いが、てんかん、髄膜炎、頭部外傷などが原因のけいれんもある。

・対処法

短いけいれんなら、命にかかわることはまずない。そのため、けいれんを起こしたらとにかく落ち着いて、始まった時間を確かめる。治まったところで、熱を測る。病院で診察を受ける時に、熱の有無や持続時間、けいれんの様子の観察が役に立つ。
けいれんが治まった後は、あごを押し上げたまま顔を片側に向けて呼吸が戻るのを待ち、意識が回復するまでそのまま静かに寝かせる。発作後は、意識が完全に回復し、錯乱もなくなり、ほぼ正常に動けるようになるまでそばを離れないようにする。通常は主治医に知らせる。

・緊急性があるけいれん状態(下記のようなけいれんの場合、救急車を呼ぶ)

*けいれんが10分以上持続する場合
*短時間にけいれんを繰り返す場合
*身体の一部だけにけいれんがある場合(けいれんの強さや目の向き、頭の向きが左右で異なるなど、片側だけにけいれんがある場合)
*けいれん後、意識が回復しない場合
*嘔吐を繰り返す場合

・けいれん中にやってはいけないこと

*舌を保護しようとして口の中にスプーンなどを入れない
有益性より有害性の方が大きいため行わないこと。けいれんで舌を噛むことは、まずない。詰め物を無理にすることにより、かえって歯が折れたり口の中を傷つけたり、窒息の原因になったりして危険。また、あごの筋肉が収縮するため救助者がかまれたりする危険性もある。
*身体をゆする、身体を抱きしめる、叩く、大声をかける
いずれも悪化させることがある。
また、発作が終わったあとの意識が戻っていない間に、水や薬を飲ませると窒息や嘔吐の原因になる。

・けいれん後に診察を受ける際、必要になる情報

*発作が始まった時の状況(どのくらい急に始まったか、発熱があったか、頭は打っていないか、テレビを見ていたかなど)
*けいれんの種類(頭、首、顔の筋肉の引きつりなど筋肉の異常な動き、舌をかむ、よだれが出る、排尿障害、筋肉の硬直などの症状があったか、全身か一部分か)
*意識状態の確認(名前を呼んで反応したか)
*眼球の位置(白目をむいていたか、視線の向きはどうだったか)
*発作はどの程度続いたか(可能な限り時計などで正確に何分間続いたかを計る)
*回復するまでにどれくらいの時間がかかったか

◆応急手当~気道異物の除去~

苦しそう、顔色が悪い、声が出せないなどの窒息のサインにいち早く気づくこと。「のどが詰まった?」「呼吸ができない?」などと尋ね、うなずくような仕草があればただちに対処する。強いせきをしている場合、自然に異物が排出されることもあるので、少しの間注意深く見守る。せきが弱くなる、出なくなるなどの状態悪化がみられたら、窒息と判断する。

・声かけに反応がない場合

*周りの誰かに119番通報とAED手配を頼み、心肺蘇生を開始する。救助者が1人だけなら、まず119番通報を。
*心肺蘇生の途中で異物が見えたら、指でつまみ出してもよい。見えない場合はやみくもに探さず、そのために心肺蘇生を遅らせない。

・声かけに反応がある場合

*周りの誰かに119番通報を頼み、「腹部突き上げ法」を試みる。救助者が1人だけなら、通報よりもこの処置を先に行う。
*手技の未熟さ、傷病者の体型などの問題で「腹部突き上げ法」がうまく行かない場合は、「背部叩打法」を試みる。
*異物が取れるか傷病者の意識がなくなるまで、または救急隊到着まで、どちらかの方法を続ける。

・腹部突き上げ法(妊婦や乳児には行わないこと)

*傷病者の後ろから腰付近に手を回す。
*片方の手で握りこぶしを作り、傷病者のへその上で、みぞおちより下にくる位置にその親指をあてる。
*もう片方の手で握りこぶしを握り、すばやく手前上方に圧迫するように突き上げる。
(腹部の内臓を損傷する可能性があるため、この方法を実施後は医師の診察を受ける。)

・背部叩打法(成人の場合、腹部突き上げ法よりも有効ではない)

1歳以上〜成人
傷病者を立つか、座らせた姿勢でうつむかせ、後方から手のひら基部(手首に近い部分)で左右の肩甲骨の中間あたりを力強く何度も連続して叩く。
*乳児(1歳未満)
片腕に乳児をうつぶせに乗せ、手のひらで顔を支える。頭を体より低くして、もう片方の手のひら基部で背中の真ん中を数回強く叩く。

◆応急手当~出血~

傷口からにじみ出る出血→「毛細血管性出血」=応急手当で止血可能
黒ずんだ血が流れ出る出血→「静脈性出血」=応急手当で止血可能
まっ赤な血が噴水のように吹き出る出血→「動脈性出血」=このような大量出血時は、止血と同時に119

・直接圧迫止血法

*出血している部分に清潔なガーゼやハンカチをあてて片手で圧迫する。(出血量が多いときは両手で強く圧迫する)
*血がにじんできたらガーゼやハンカチを重ね、きつめに包帯を巻く。

◆応急手当~やけど~

どんなやけどもまずは患部を流水で冷やすので、流水で冷やしながら患部と傷病者の表情を観察する。

*面積が広範囲→生命に関わる。至急119番と応急手当を行う。
*面積が小範囲→生命に危険なし。やけどの深さを確認する。

*皮膚が赤い。ひりひり痛む。
I度熱傷(表皮やけど)。部分的なら家庭での手当でも治る。
*水ぶくれができている。強く焼けるように痛む。
II度熱傷(真皮やけど)。やけど跡が残るなど、やけどの範囲によっては皮膚移植が必要な場合も。応急手当後に医療機関へ。
*皮膚が蒼白、または炭化による黒い。あまり痛まない。
III度熱傷(全層やけど)。やけど跡が残るなど、皮膚移植が必要な場合も。応急手当後に医療機関へ。

・やけどに対する応急手当の流れ

*どんなやけども患部を流水で冷やす。
(流水の刺激が強い場合)→直接水圧がかからないように洗面器などに水道水と少量の氷を入れて患部をつける。
(顔やお腹の小やけど) →流水や洗面器が使いづらいときは、患部にタオルをあて、その上からやかんやホースで水を注ぐ。
(広範囲のやけど) →浴槽に水をためて衣服を着たまま体をつける。
(薬品によるやけど) →薬液が染みた衣服を脱がし、流水を直接患部にかけて薬液を洗い流す。

薬品によるやけどの場合は薬液を洗い流すことを優先するため強い流水だが、それ以外の場合はあまり強い流水を直接患部にあてない。水圧による痛みの増幅や患部悪化の原因になる。
出火などで衣服の上からやけどを負った場合、衣服を無理に脱がせると皮膚と衣服が癒着して皮膚が剥離することがあるため、衣服を着せたまま冷やすこと。

*冷やす時間は2030分、ずきずきする痛み(疼痛)がやわらぐのを目安にする。
ただし広範囲のやけどの場合、全身を冷却し続けると体温をひどく下げる可能性があるので10分以上の冷却は避ける。

*十分に冷やしたら、手足はガーゼなどで軽く包む。
広範囲のやけどはシーツで全身を覆うようにして患部を保護する。水ぶくれができても、破らないこと。

◆応急手当~指や腕の切断~

応急手当と同時に119番、または手当後すぐに整形外科などを受診する。切断創の状態によって、切断後数時間以内であれば再接着が可能。

・指の場合

*傷口に清潔なガーゼをあて、その上から包帯を強めに巻いて圧迫止血。
*包帯の根元をひもで縛って固定。
*切断された指をガーゼでくるみビニール袋に密閉。氷水入りの袋や容器に入れて傷病者とともに医療機関へ搬送。

切断指を直接氷水に入れて冷やすのは禁物。細胞が破壊され再接着できなくなる。

・腕の場合

*切断面に厚く重ねた包帯などを直接あてて圧迫止血。救助者はできる限りビニール手袋などを装着して手当を行う。(血液感染防止のため)
*切断された腕をビニール袋に密封。氷を詰めたアイスボックスなどに入れて、傷病者とともに医療機関へ搬送。

切断肢を直接氷水に入れて冷やすのは禁物。細胞が破壊され再接着できなくなる。

・再接着が可能な時間の目安

切断後およそ8時間以内。応急手当に示した方法で切断指()が約4℃の状態に保存されていることが条件。長時間経過してしまうと壊死状態となり、十分な血行再建は難しくなる。

・再接着が可能な切断

刃物や機械などによる鋭利な切断(クリーンカット)は、動脈、静脈、腱、神経の確認が容易で、縫合手術による元の状態への修復が可能。

・再接着が困難な切断

挫滅状態(砕けていたり潰れていたりする状態)や引き抜き切断では、血管や腱などの損傷が激しく、縫合手術は困難。

◆応急手当~骨折~

・骨折かどうかの判断

*骨が折れる音がしたか(本人に確認)
*患部の腫れ上がり、不自然な変形や曲がり、激痛

これらの場合は患部の手当と固定を行い、119番または直接整形外科などへ。骨折かどうかの判断がつかない場合も、骨折と考えて応急手当を行う。

*首、背骨(脊椎)、骨盤の骨折が疑われるときは、硬い床に仰向けに寝かせて患部を動かさないように固定し、意識と呼吸の状態に注意して救急車の到着を待つ。

*骨折部に副木をあてて固定する。
適当な木がなければ、段ボール、雑誌、傘などで代用する。

*ショックや痛みによる顔面蒼白、震え、冷や汗がみられたら毛布などで保温する。
骨折部の保護と副木固定を行うことで、疼痛、腫れ、傷口からの細菌感染を最小限に抑えることができる。

開放性骨折の場合

皮下骨折(露出なし)ではなく開放性骨折(傷口から骨が見える、突き出ている)の場合は副木をあてる前に以下を行う。
*傷口にガーゼなどをあて、その上から包帯でぐるぐる巻きにする。
*骨が突き出ていたら、その周りにガーゼなどを積み重ね、骨を圧迫しないように巻く。
*その後副木をあてて固定する。

◆応急手当~吐血・喀血~

・まずは血の色などを観察する。

*黒褐色。コーヒーの残りかす状。→食道や胃・十二指腸などからの出血 =吐血
*鮮紅色(鮮血)。泡まじり。咳き込み。→気管や肺などからの出血 =喀血

どちらも出血が大量で昏睡しているようなときは119番。軽度であっても容態の落ち着きをみて医療機関を受診する。唾液やたんに少量の血がまじる程度の症状が、大吐血・大喀血の前兆という場合もある。

・吐血の原因疾患

胃・十二指腸潰瘍、胃がん、胃炎・食道炎、食道静脈瘤の破裂など

・喀血の原因疾患

肺がん、肺結核、気管支拡張症、胸部強打による肺挫傷など

・対処法

*吐いている最中は顔を下向けに。むせたら背中を軽く叩いて、吐き出しを助ける。
*口の中に血液の凝固物(窒息の原因)がないか確認する。
*自力で吐き出せないときは、ガーゼを巻いた箸などで除去する。
*横向きに寝かせて毛布などで保温する。
*次の吐血・喀血に備えて洗面器などを用意。
*その後の吐血は少量なら横向きのまま、大量なら腹ばいにして。喀血は座らせて前かがみで。
*吐き終えたら、薄い食塩水でうがいをする。

◆応急手当~鼻血~

打撲、ひっかき傷、一時的な興奮、内因性疾患などが原因であり、そのほとんどがキーゼルバッハ部位(鼻の入り口に近い静脈)からの出血である。510分で止血が可能であるが、出血が止まらない、頻繁に繰り返すときは医療機関(耳鼻科・内科など)を受診する。

・対処法

*衣服をゆるめ、イスなどに座らせて、ややあごを引いた姿勢に。
*呼吸は口で行い、鼻翼(小鼻)を両側からつまんで510分くらい圧迫。(出た血を自然に固めるため)
*洗面器などを用意し、口に落ちてきた血液は吐き出させる。
*顔面が紅潮していたら、額や鼻の周りに冷たいタオルをあてる。

寝かせるときは、血液を吐かせやすくし、気道への誤嚥を防ぐために顔を横向けにする。
外傷もなく鼻血が繰り返す場合は、高血圧、血液疾患、鼻腔内悪性腫瘍などの疑いがある。

緊急時の対応及び危険防止に関する講義」のテキストはこれで終わりとなります。
貴重な時間を割き、最後までお読み下さいましてありがとうございました。

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